理想のVブレーキ(その3) [エンヂニアりんぐ]
今回作ったVブレーキアダプターですが、質問を頂いたので詳細を紹介します。
説明用にいろいろ書いたら長くなってしまった(汗)
今回の設計のポイントは以前も言いましたが
1)ブレーキ中心とシートステー中心線を可能な限り近づける
2)マグラ4点台座の下2本のボルトとVブレーキのピボットが同軸
です。
この二つを両立しようとすると、変換台座をマグラ台座に固定する為のボルトの頭部分と、Vブレーキを取り付けるスタッドボルトのネジ部分の高さだけどうしても台座が厚くなってしまう。
この相反する問題を両立することが最大のポイントでした。
市販の変換アダプターは、Vブレーキのピボット位置をマグラ4点台座の下2本のボルトより下にオフセットさせた上で、変換台座の厚みをある程度厚くしています。
しかしこれは言わば「逃げ」の設計です。
なぜか。
下の図のように、ブレーキシューが上に行くと(シートステーから離れると)、
ホイールの円弧に沿って角度が付いて、ブレーキシューの上側のブレーキ軸との距離(A)が短くなっていきます。
こうなると、下図のようにシューの前端と後端で均一な圧力が掛かりません。
前進方向と後進方向で効きに差が出て、シューが偏摩耗します。
ちなみに、26インチは比較的マシなのですが、20インチでこれをやると酷いことになります。
20インチのほうがホイールの半径が小さい為、より顕著に影響が出ます。
今となっては20インチのVブレーキ化する人はあまり居ないのかも知れませんけどね。
当時、この問題で苦労した人を少なからず知っています(笑)
もう一つの影響はブレーキの開きです。
最近の、フレームにビルトインブースターが溶接されているものは、フレーム側はあまり開きません。
実は結構しっかりしています。
開くのは、Vブレーキのピボットが「逆ハの字」に開きます。
これも、下の図のようにブレーキシューがシートステーから離れるほど顕著になります。
ATOMZは、このシートステーがねじれる方向での開きを嫌っていると思われます。
だから、「Anti Torsion(ねじれ) System」という言い方なのですね、多分。
設計の狙いはこんな所です。細かく言うと他にも色々ありますが。
さて、本題、今回のアダプターの設計です。
今回のキーポイントである厚みを押さえる方法は、2つ。
一つは、フレーム側の4点台座にカポッとハマるように台座裏面に凹みを付けていること。
もう一つは、下の図の丸で囲った部品。スプリングのアジャスターです。
コレがハマる部分まで台座側で一体として作製し、ピボットボルトのネジ長を収めることにしました。
台座を取り付ける4点のボルトのうち、下2本はピボットと同軸なので台座を固定してから
ピボットボルトをネジ込みます。
これで、究極に薄く、ブレーキシューがベストな位置関係に収まるアダプターが出来ました。
そして、これが「汎用性が無い」という理由でもあります。
Vブレーキ側の部品に改造が必要なので。
ベースにするのがXTRなら私と同じなのでもちろん可能(パラレルリンクは殺したほうが良いけど)
あと、Avid Ultimateも、このスプリングアジャスターが独立した部品なので小改造で使えそう。
他のブレーキは、試してみないと何とも言えませんがバラして改造が必要。
マネされる方は使うブレーキもセットで相談に乗りますよ〜
何にせよ、そこそこの工作技術は必要です。
説明用にいろいろ書いたら長くなってしまった(汗)
今回の設計のポイントは以前も言いましたが
1)ブレーキ中心とシートステー中心線を可能な限り近づける
2)マグラ4点台座の下2本のボルトとVブレーキのピボットが同軸
です。
この二つを両立しようとすると、変換台座をマグラ台座に固定する為のボルトの頭部分と、Vブレーキを取り付けるスタッドボルトのネジ部分の高さだけどうしても台座が厚くなってしまう。
この相反する問題を両立することが最大のポイントでした。
市販の変換アダプターは、Vブレーキのピボット位置をマグラ4点台座の下2本のボルトより下にオフセットさせた上で、変換台座の厚みをある程度厚くしています。
しかしこれは言わば「逃げ」の設計です。
なぜか。
下の図のように、ブレーキシューが上に行くと(シートステーから離れると)、
ホイールの円弧に沿って角度が付いて、ブレーキシューの上側のブレーキ軸との距離(A)が短くなっていきます。
こうなると、下図のようにシューの前端と後端で均一な圧力が掛かりません。
前進方向と後進方向で効きに差が出て、シューが偏摩耗します。
ちなみに、26インチは比較的マシなのですが、20インチでこれをやると酷いことになります。
20インチのほうがホイールの半径が小さい為、より顕著に影響が出ます。
今となっては20インチのVブレーキ化する人はあまり居ないのかも知れませんけどね。
当時、この問題で苦労した人を少なからず知っています(笑)
もう一つの影響はブレーキの開きです。
最近の、フレームにビルトインブースターが溶接されているものは、フレーム側はあまり開きません。
実は結構しっかりしています。
開くのは、Vブレーキのピボットが「逆ハの字」に開きます。
これも、下の図のようにブレーキシューがシートステーから離れるほど顕著になります。
ATOMZは、このシートステーがねじれる方向での開きを嫌っていると思われます。
だから、「Anti Torsion(ねじれ) System」という言い方なのですね、多分。
設計の狙いはこんな所です。細かく言うと他にも色々ありますが。
さて、本題、今回のアダプターの設計です。
今回のキーポイントである厚みを押さえる方法は、2つ。
一つは、フレーム側の4点台座にカポッとハマるように台座裏面に凹みを付けていること。
もう一つは、下の図の丸で囲った部品。スプリングのアジャスターです。
コレがハマる部分まで台座側で一体として作製し、ピボットボルトのネジ長を収めることにしました。
台座を取り付ける4点のボルトのうち、下2本はピボットと同軸なので台座を固定してから
ピボットボルトをネジ込みます。
これで、究極に薄く、ブレーキシューがベストな位置関係に収まるアダプターが出来ました。
そして、これが「汎用性が無い」という理由でもあります。
Vブレーキ側の部品に改造が必要なので。
ベースにするのがXTRなら私と同じなのでもちろん可能(パラレルリンクは殺したほうが良いけど)
あと、Avid Ultimateも、このスプリングアジャスターが独立した部品なので小改造で使えそう。
他のブレーキは、試してみないと何とも言えませんがバラして改造が必要。
マネされる方は使うブレーキもセットで相談に乗りますよ〜
何にせよ、そこそこの工作技術は必要です。
2013-08-05 01:13
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コメント(10)
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おおお!これが究極のアダプターですね。
とても詳しい説明に感動しました!
ありがとうございます。
シートステイからブレーキシューが離れていくと説明にあるような
シューの圧力差が発生してるなんて全然想像できてませんでした。
「厚みを抑えつつ同軸化」の問題も複数のアイデアを合わせた結果
達成されてるのがスゴイです。お見事です!
普段から部品を観察したり、動きを想像されてるんですね。
一番のビックリは「皿ネジを使うこと」と皿ネジの頭外径がVポストの
ネジ穴径より小さいってことでした。
さっそく会社の取引先に見積もりをとってみます。
ワンオフでアルミのブロックからの削りだしだからビックリする
見積もりが返ってきそう・・・。
by nemekuji dai (2013-08-06 19:41)
勉強になりました
しかし懐かしい写真出てきたな~(^◇^)
by ピエール (2013-08-06 21:22)
昔20インチでくろうしてた人って一体誰の事や〜〜〜〜〜〜〜!
by MORI (2013-08-07 07:26)
nemekuji daiさん>
皿ボルトはM10のネジ穴内径より少しだけ太いので、ネジの頭も加工しています。
ここには書いていない細かい部分でもいろいろ加工が必要なので、簡単では無いかもです。
まあ、ギリギリを攻めすぎなければ良いんですけどね(笑)
ワンオフだと結構掛かってしまいますね。
nemekujiさんのも出来たら是非見せてください!
by yo!C-Biketrial (2013-08-09 00:24)
ピエール>
ちょうど良い例の写真探したら昔のコレがあったんよ。
別に悪い例って訳じゃないけどね(笑)
by yo!C-Biketrial (2013-08-09 00:37)
モリくん>
モリくんに限らず当時は結構悩んだ人は多いよね。
前後ディスクが普及した今となっちゃ、良い経験の蓄積じゃないかと思うけどね。。。
今回の私の設計思想もそういった情報あってのもんだし。
by yo!C-Biketrial (2013-08-09 00:45)
見積もり取るために図面を書いていたんですが
V台座のネジ深さをいくらにしようか迷っています。
写真で拝見したところけっこう浅そうに見えますが
ネジ深はいくらに設定されてますか?
あまり浅いとモゲそうで悩みます。
(でも、それも楽しい。)
by nemekuji dai (2013-08-09 22:32)
nemekuji daiさん>
私のは結構浅いですよ。
削れる所を徹底的に削ぎ落としています。
実際には使われるブレーキとのクリアランスを考慮して決めて下さい。現物合わせの部分もあります(笑)
モゲそうかどうかは強度計算して材質も選定して下さいね。。。
私は結構良い材質使ってます。攻めた設計をすると材料でもコストが上がってしまいますね。
by yo!C-Biketrial (2013-08-11 00:49)
流石ですね!vこだわってやって来ましたが、台座はノータッチでした。
by jack (2014-12-15 11:54)
Jackさん>
本当に申し訳ありません。
こんな過去の記事にまで遡って見て頂いて、コメントまで頂いていたのに全然気付かないなんて。。。
有り難うございます。
Vブレーキは理想的な状態にセッティングすると大化けしますよ。
初めからリム面に対して垂直に作用力が発生する油圧ブレーキとは違い、Vブレーキは円弧軌道でシューが動くので、シューの動的な軌道を可能な限りリム面に垂直に近づけるかが重要で、その為には根本的に台座の位置が重要になります。
というか台座の位置でしか、力学的にVブレーキの性能を向上させることは出来ないと考えています。
これでもまだやり残したことがあるので、そのうちバージョン2を作ると思います。
ただ、自作はもっと汎用性は無くなると思います。。。(笑)
by yo!C-Biketrial (2016-01-13 00:59)