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理想のVブレーキ(その6) [エンヂニアりんぐ]

さて、今回も計算やグラフが多いです。
興味の無い人はスルーしてね(笑)。

Vブレーキ、というか機械式のリムブレーキのほぼ全ての課題はやはりシューが円弧を描いて動くことです。

しかしその影響はVブレーキに於いて最も顕著に表れます。
今回はその辺を少し解説します。
何故か。それはVブレーキが極めて大きいレバー比を持つためですね。

下の図で言うとピボット〜ブレーキシューの距離(b)がアーム長さ(a)に対して短い為、テコの比率が大きくなり、ブレーキ力が大きいと言うのが特徴です。
V_brake_ratio12.jpg

しかし、このピボット〜シューの距離が短いことが、シューの回転半径を小さくすることになり、シューがリム面に均一に当たることを阻害している要因になっています。

じゃあ、この長さを大きくしたら、、、というのが、今回の検討です。


前回は、左右の台座間距離を現状の100mmから狭くすると効率が良くなるけど、
太いリム、タイヤを使うトライアルでは現実的ではないと言うことが分かりました。
ではピボット位置を下げたら。。。

図6.png
ピボット位置を下げると、図中の角度(θ)が小さくなりそうです。

この角度が小さいほど、アームがシューを回転させる力の方向と、シューがリムを垂直に押す方向の差が少なくなり力学的な力の伝達効率が上がるはずです。

実際に計算してみたのが下のグラフです。
図7修正.png

確かに、ブレーキ効率(赤線)はピボットからの距離(b)を大きくするほど向上していきます。
しかし!同時にレバー比(a/b)も下がっていきます(青線)。
実際に有効なブレーキ力は、レバー比×効率で表されます。
結果的に、実際のブレーキシューに働く有効力(緑線)は、シューの位置がピボットから25mm付近で最大になり、それ以上長くしても向上しないことが分かります。

それともう一つ。素人的にすぐ分かる単純な問題。
図12.png
タイヤに当たるよね(笑)

ただし、このピボット〜シューの距離を伸ばすことは、もう一つ良いことがありそうなので捨てがたい。
それは、下の図でいう所のシューの前後、内外の回転半径差を小さくすることが出来るかも。
ということです。
図8.png

※シューの内外半径差については、「自転車探検!」さんのサイトにも書かれています(ブレーキだけでなく、自転車全般について大変参考になるサイトです)。

☆記述をそのまま引用させて頂きます☆
ブレーキシューは、キャリパーの支点を中心とした円弧運動をするので、この円弧の半径を回転半径と呼ぶ。ブレーキシューの回転半径が小さいと、シューの外側と内側の半径比(外内回転半径比)が大きくなる。 外内回転半径比が1より大きい程、シューとリム間の平行移動性が悪いこと及びシュー外側と内側ではリムの締め付け力が異なる(均一性がない)ことを意味する。



ではさっそく計算してみましょう。
図9.png

確かに、台座間距離が50mmの時にはピボット〜シュー間距離が大きくなるほど、前後回転半径比、内外回転半径比ともに低下しているのが分かります(青線)。
しかし、台座間100mmの「一般台座」(黒破線)、Sp台座Ver.1(赤線)は、あまり変化しません。

前後回転半径比はSp台座Ver.1が非常に少なく、さらにシューの位置による変化量も少ないですね。これは狙い通りに出来ています。
しかし、ここからの改善代があまりありません。

この結果を、縦軸に内外、横軸に前後の回転半径比を示した下のグラフでまとめてみます。
図10修正.png

内外半径比、前後半径比ともに、理想的には”1”がベストです。
両方とも1の時に、シューがリムに完全に均一に当たることになります。

さて、Sp台座Ver.1はこうやって見るとかなり良いところまで来ていると思います。

上記のピボット〜シュー間距離を、ワイヤーがタイヤに接触しないギリギリまで攻めたとしても、それほど改善しそうにないですね(上のグラフで”レバー比変更”と示したあたり)


さて、レバー比の変更による改善は、シュー当たりの均一性を改善する代わりにブレーキ力を低下させます(はじめに計算したグラフ)。
したがって、これらの関係は下図のようになります。
図11.png

こうしてみると、Sp台座Ver.1は一般台座よりも高いレベルにはあるものの、
これまでの検討から、この台座をベースに改善していくと、グラフ中では右上か左下にしか行かなさそうです。
今はブレーキ力そのものは少し低めで、コントローラブルかつシューが均一に当たり「カチッ!」とリムに当たる感覚が分かりやすい、という位置付けですね。

これはこれでかなりハイレベルな所にまとまっていると改めて思います。
サンディングとシューの相性さえ良ければ、絶対的な効きは何とかなるのでこれでも十分です。

でもさらなる理想はグラフで言うと左上。パワフルかつOn-Offが分かりやすいのがベストです。

しかし、これまでの検討で台座側で出来ることはあまり無さそうです。
しかもこの台座Ver.1は薄くするために設計を攻めまくった結果、ピボット位置を変更したりするとどうしても厚みやら剛性やら、何かを犠牲にしてしまいます。

と言う訳で、台座はやはりこれが究極の完成形。

次はブレーキ本体のほうで改善を考えます。
ここまで来るともう察していると思いますが、かつてシマノが採用していた「パラレルリンク」付きのVブレーキ。あれ使えば良いじゃん!

。。。なんですが、一筋縄では行かないんですよ。
ではまた。
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