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ディスクブレーキとホイール剛性(その2) [エンヂニアりんぐ]

私は素人なので、コンピュータで応力解析したりしてる訳ではない。
さらに、部品を設計、製作する訳でもないので、厳密な強度計算は不要。
もの凄く単純化した計算で「ザックリと」計算して遊んでいます。

もっとも、今回の私の目的が
「商品をある基準で相対的に比較したい」なので問題ありません。

※例えば「フランジ径が大きい28Hのハブ」と「フランジ径の小さい32Hのハブ」ってどっちが剛性が高いの?どっちが最終的に軽く仕上がるの?
って、ピンとこないでしょ?
重量はハブと、スポークが分かればすぐに分かるけど、
どっちが剛性あるかってのは、直感に頼って組む場合が多いでしょう?

その「直感」よりは、ザックリと計算してみたほうが、まだマシな判断基準になると言う訳です。

でもさすがにザックリしすぎると正確な比較が出来ません。
前回の計算では「ハブのねじれ剛性を無視」して計算しましたが、冷静に考えるとこれって重要だな。。。と思ったので、計算し直してみました。
まず、なぜハブのねじれ剛性が重要かというと、ディスクブレーキはハブの左側のみにブレーキ力が発生しているからです。
左側(ディスク側)のハブフランジとスポークはほぼ直接その力を受け止めるのに対して、右側(反ディスク側)はハブボディを通して伝達された力を受け止めています。
スクリーンショット(2016-04-26 1.37.19).png

「あんな短いハブの筒が、そんなにねじれてるんか?」と思うかも知れません(私もそうです、だから前回の計算では無視した)。
しかし、少し調べてみると胴径の細いロード用のハブなんかでは無視出来ないほどのねじれがあるみたい。
むしろ、ロード用の軽いホイールなんかのハブは、軽量化の結果ねじれ剛性が低くなり、反駆動側のスポークのトルクへの寄与も低くなるから、極端な話、反駆動側はスポークを減らしたり、ラジアル組みにしちゃっても問題ない。。。という考え方でやってるみたい。

と言う訳で、実はバカにならないんじゃないかと思うので、
「ねじれ剛性」を考慮したいのですが、ここで問題があります。

前回の計算はフランジ径などハッキリと分かっている情報をもとに計算しています。
しかし、ハブのねじれ剛性についてはハブ胴の外径、内径、肉厚分布などの情報が必要になるため、各ハブの正確な数値が分かりません。
そのような情報はネットで調べる程度では見つかりませんね。。。設計者しか知りません。

したがって、大まかな外径や重量からハブ胴部分の寸法を推定するしかありません。


しかし憶測とはいえ、ある程度正確さを確保したい。。。
実物を計測することが出来れば、胴の外径は分かります。
しかし全てのパーツを手に持って見ることができる店がないので、しかたなく写真から判断します。

誰か、実測値を知っているマニアなかた居たら教えてください。 しかしお店でハブの胴径を測ってる客が居たらビビるよな。。。 でも、そんな客が居たら、きっと本質をちゃんと理解してる方のはずです。

しかし、肉厚となると残念ながら分かりません。片っ端から買って切断するなんてこと出来ませんから(笑)。

しょうがないので推定します。
まず、手元に今使用中のEchoTRハブがあります。
こいつのハブ胴径は実測で18mm。
中には直径10mmのシャフトが通るのですが、ベアリングフランジ部分があるので最大径12mmくらい。
つまり、ハブ胴の内径は最低12mmと言うことになります。その時の肉厚は2.5mm。
強度とか重量とか考慮してもまあそんなもんじゃないかな。
ということでこの数値でねじれ剛性を計算してみると、だいたい50Nm/deg程度と出ました。

少し古い文献を漁ってみると、昔の胴の細いハブはねじれ剛性が30Nm/deg程度、、、というのを見つけたので、まあ妥当な推定が出来ているんじゃないか。

さて、ディスク側フランジ径が56mm、反ディスク側のフランジ径が30mmのハブを例に取ると、
トルク剛性はディスク側は約250Nm/deg、反ディスク側は約70Nm/degくらいです。
しかしハブのねじれ剛性が50Nm/degだと、反ディスク側のトルク剛性はせいぜい20Nm/deg程度になります。

ということは反ディスク側のスポークは10%程度しかトルク剛性に寄与しません。

つまり、ハブ胴の細いモデルではハブのねじれ剛性のほうが問題になるので、反ディスク側のフランジが大きくても小さくてもあまりトルク剛性には貢献しない。
だったら、「ハブ胴を細くして、反ディスク側のフランジも思いっきり小さくして軽量化」
というのが、最近主流の軽量なトライアル用ハブの特徴なんだと思います。

そして、反ディスク側も大きいフランジを持つ、HOPE pro4、Chris king などは、反ディスク側にもトルクを効果的に伝達する為に胴径も太いのですね。

で、同じような感じで各モデルの胴径を推定して、ハブのねじれ剛性を考慮して計算し直したのが下のグラフ。

スクリーンショット(2016-04-26 1.37.38).png

まあ前回の計算と傾向はそんなに変わりませんね。
しかし、Chiris Kingはやはり突出した性能を持っています。
(左右両フランジが大きい上に、ハブ胴も太い、その割りに軽い!)

一方、28Hのモデルは軽量化最優先なのでハブ胴も細いものがほとんど。
つまり、ハブ胴のねじれ剛性を考慮するとやはり剛性が低いものが多いです。
「軽い物ほど剛性は低く、重いほど剛性が高い」という至極当然のような傾向になっていることが分かります。

・・・なんだ、結局計算しなくたってそんなもん直感の通りじゃん。

って思っちゃいますが、前回と同様の、剛性/重量比と値段を比較したグラフを見ると製品位置付けが分かりやすくなりました。

スクリーンショット(2016-04-26 1.59.03).png

やはりChris Kingが抜きん出ています。そして、廉価なEchoTRは「ああ、やっぱりね」という位置付けに来るのも納得。

28Hのモデルは、前回の計算では「高いものほど、剛性/重量比が低い」という結果でしたが、ハブのねじれ剛性を考慮すると、ちゃんと高い物ほど重量あたりの剛性はアップしていることが分かります。

実は高級品は「剛性を保ったまま、出来る限り軽量化」している、その為に応力解析やらを駆使して不要な肉を削ぎ落とし、必要な部分は残す。そう言うコストアップの結果ということですね。


こうしてみると、Trialtechの製品ってコストパフォーマンス高いよね。

私はTrialtech製品を選ぶことが多いです。
なぜかと言うと、性能や強度や耐久性と、値段のバランスがもの凄く高くまとまっているんです。
特別軽いモデルでもちゃんと耐久性を意識しているし、中間グレードのものはコストパフォーマンスが凄く高い。
Trialtech SLはかなり軽量でありながら、剛性をしっかり考慮しているし、
いっぽうHDのほうは「リーズナブルで頑丈に」と言う明確なコンセプトで出しています。

シビアな競技向けと、ハードなストリート向け、どちらもよく分かってるから出来るんでしょうね。
好きなメーカーの一つです。




さて、今回は推定が入ってますので、実物はこの結果とは違う可能性もあります。
例えば、ハブの肉厚は、シャフトやベアリングの分を除いたハブボディの重量から妥当な所を予測していますが、ベアリングやシャフトの重量推定が間違っているかも知れません。

しかし、それでも、
前回)正確な情報で出来る範囲での計算だが、実態には合ってない。
今回)より実態に近いが、正確ではない、憶測をもとにした情報の入った計算。

・・・のどちらが実物に近い比較になっているのかと言うと、憶測がある程度妥当なら、後者のほうがまだ信憑性があるのかなと。

※実際、28Hのモデルにしても、前回の結果「値段が高いほど剛性/重量比が低い」ってのはちょっと考えにくい。
もちろんブランドネームによる性能とは違った部分の価格上乗せがあるのは知ってるけど、Jitsieほどのメーカーが「ただ軽いだけで剛性を犠牲にしたもの」をハイエンドとして売り出すとも思えない。

だからハブのねじれ剛性を考慮した今回の計算のほうを採用してみたいと思います。


最後に、素人なのでメーカーの設計者やプロショップのメカニックさんから見たら、鼻で笑われるかも知れません。
あと、この記事を読んだかたも、あくまで私個人の意見なので丸っと鵜呑みにせず、自分の価値基準で判断してほしいなと思います。

でも、見た目やブランド名、単体重量の重い軽いなどに踊らされず、自分の納得のいくものを使いたい。
チャリにお金を掛けたくない訳ではない、価値が有ると思う物には惜しまない。
けど、「高い物」が欲しいんじゃなくて「正しい物」が欲しい。
そう思うわけです。
営業の人から見たらめんどくさい客ですね(笑)
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